ギター職人 バーナビー・ラルフ [Barnaby Ralph]

ギター職人
[出身]イギリス
[経歴]University of Queensland卒。ウィーンにて、フルートやリコーダーの奏者として活躍後、来日。現在、成蹊大学の文学部英米文学科の准教授。専門はレトリック、音楽学、比較文化学、法学、英語文学。ギター作りは40歳から始め、作品は主にチャリティで販売。売り上げ金は、カンボジアの子どもたちへ寄付している。

ボディもピックアップもエフェクトも全部手づくり。こだわりのギター職人。 Barnaby Ralph_photo1

 

 

 

ギターづくりのきっかけは「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」 Barnaby Ralph_photo2

 

 天気のいい日には住まいのある西荻窪から往復2時間かけて、石田倉庫のアトリエに通うギター職人Barnaby Ralph(バーナビー・ラルフ)さん。わざわざ立川まで!と驚くと、「わたしの家にはテレビがないから。一般的に人は2時間テレビを見るそうです。その2時間をわたしは有効活用してるんですよ。」とのこと。言葉の選び方、話し方がとても面白くて、思わずお話に引き込まれてしまう。 それもそのはず。バーナビーさんは、成蹊大学の文学部英米文学科の准教授。普段は大学で、修辞学と哲学教鞭をとっている。「ごめんなさい。わたしの日本語はあまりよくなくて。」と、日本人並に謙虚。話の主要な部分は同じ石田倉庫のアトリエの入居者であるアーティストの松瀬勇樹さんに通訳に入って頂きながらも、時折ユーモアを交えた話ぶりは、とてもていねいで真摯だ。 バーナビーさんがギターを手づくりするようになったのは、5〜6年前の40歳のとき。どうしてギターを作るようになったのかと聞くと「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)ですね。多くのこの時期の男性は、高級スポーツカーを買うか、不倫をするかを選ぶそうですが、スポーツカーは高価ですし、不倫はたいへんですし。それで、わたしは安上がりなギターづくりを選びました。」と、これまた、冗談まじりな返事。 

 

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漢字が好きだというバーナビーさん。ギターのネックに埋め込まれた貝製の“徳”の文字も自筆。屋号“James Ralph”は、リスペクトしているバーナビーさんのお父様の名前。

 

ギターづくりは仕事のkick back。わたしにとって一番リラックスできる時間。

 

 まるでなぞなぞを解くように話を聞いていくと、実はバーナビーさん。日本に来る前は、ウィーンでクラシックのフルートやリコーダーの奏者として活躍、音楽歴12〜35歳のプロのクラシック演奏者だったそうだ。「クラッシックの世界はアスリートの世界。毎日何時間も練習しなくてはならなりません。でも、ギターはhobby。そして、ギターづくりは仕事のkick back。わたしにとって一番リラックスできる時間なんです。」 とにかく手づくりにこだわっていて、ボディもピックアップもエフェクトも全部バーナビーさんの手づくり。「父も趣味で木工をしていて、とても真面目なクラフトマンでした。いま、わたしが持っている知識は、父から色々と教わってきたものばかり。父が亡くなってから、初めてそのことに気がついて、父の存在をリスペクトするようになりました。だから敬意を払って、屋号を父の名前であるJames Ralphとしたのです。」 作ったギターについては、主にFacebookやオンラインフォーラムで関心のある人に販売している。「全てチャリティで、ギターを買った人の評価で値段を決めてもらい、その金額をVDCA(VOLUNTEER DEVELOPMENT CHILDREN’S ASSOCIATION)を通じてカンボジアの子どもたちに寄付しています。わたしはギターを作って、買った人はギターを楽しんで、そして子どもたちのためにお金が使われる。お金をそのまま寄付するよりも、みんなが幸せで、自分の気持ちもいいのです。」

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バーナビーさんのYouTube「TomboLP」チャンネル

 

 作るのには時間がかかるのでたくさんは作れず、いまはチャリティー販売のみだが、ノミとカンナを使っての電動機械を使わずに仕上げるギターメイキングや、実際にバーナビーさんが作ったギターで演奏している映像は、YouTubeでも見ることが出来る。 また、石田倉庫のアトリエ展では、ギターの試奏やバーナビーさんと友人によるライブもある。手づくりのギターに興味のある方はぜひ、知的ユーモアたっぷりの気さくなバーナビーさんに会いに、石田倉庫のアトリエ展へ行ってみよう。

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2015年石田倉庫のアトリエ展でのライブ演奏風景