かつての学び舎が、立川の文化芸術活動の拠点に

平成16年(2004年)、多摩川沿いに建つ歴史ある小学校「多摩川小学校」が幕を閉じた。

南富士見小学校(現:新生小学校)との統合により廃校となったのだ。

しかし今、この廃校には多くの人々が集い、様々な文化活動が行われる活気あるスペースとなっている。

かつての学び舎は、立川の文化芸術活動の拠点として新たな役目を持つようになった。

 

「共に学ぶ・創る・発信するファクトリー」

企画展示なども開催する1Fギャラリー企画展示なども開催する1Fギャラリー

 

平成18年(2006年)、市の活用方針に基づき、「子どもを中心に様々な人が集い、楽しみ、学びあう場」として市民団体による「たまがわ・みらいパーク」の運営が行われていた。

 

平成24年(2012年)、民間から活用事業者を募集し、すでに豊島区で「にしすがも創造舎」という廃校活用の運営を行っていた、NPO法人アートネットワーク・ジャパンが選ばれ、平成27年(2015年)9月27日、共に学ぶ・創る・発信するファクトリーとして「たちかわ創造舎」はオープンした。

 

「多彩な事業、ジャンルのプロフェッショナルと地域との接点に」

たちかわ創造舎は、東京の郊外・多摩川沿いに位置するという立地環境、元は学びの場という施設特徴を生かし、カルチャー・ファクトリーとして独自性に富んだ事業に取り組む。

 

現在は「インキュベーション・センター事業」、「フィルムコミッション事業」、「サイクル・ステーション事業」、「コミュニティ・デザイン事業」の4つの事業を中心とし、たちかわ創造舎の運営は行われている。

 

「インキュベーション・センター事業」では、専門性の高い文化団体やアーティストを公募し、選ばれたシェア・オフィス・メンバーに、創造舎内の教室をオフィス、イベントスペース、作業場、シェア倉庫として提供するほか、共にワークショップやイベントを行うなど、ハードとソフトの両面から活動を支援している。現在は演劇団体の風煉ダンス、すこやかクラブ、鮭スペアレのほか、チョークアーティストのChalk2Uがシェア・オフィス・メンバーとなっている。

(現在、メンバーの募集は行っていない)

シェア・オフィス・メンバーのパフォーマンスシェア・オフィス・メンバーのパフォーマンス

 

シェア・オフィス・メンバーは自分たちの創作活動のかたわら、地域の活性化にも寄与している。例えば、今年の9月23,24日に創造舎近くの富士見町団地で開催した「DANCHI ART FES 2017」は、富士見町住宅自治会と富士見町団地管理組合からの依頼で、団地内の公園をメンバーとたちかわ創造舎が一丸となってパフォーミング・アートと食で祝祭空間に変えた。その盛況ぶりは記憶に新しい。

DANCHI ART FES 2017の様子DANCHI-ART-FES-2017の様子

 

 

「フィルムコミッション事業」では校舎2Fの教室を中心に、屋上、校庭、体育館を、映画、ドラマ、CMなどの撮影場所として提供し、東京都内では撮影が難しい稀有なロケーションとして映像制作会社から注目され、ほぼ毎日撮影が行われている。

 

撮影場所の提供にとどまらず、ハリウッド映画の製作現場でも使用されているプロ仕様のカメラを使った、実践的な映像製作のワークショップも実施。映像制作に触れる機会も創出している。

 

ドラマ撮影の様子

ドラマ撮影の様子

 

映像製作ワークショップの様子

映像製作ワークショップの様子

 

たちかわ創造舎が多摩川沿いに位置することから、誕生した事業が「サイクル・ステーション事業」だ。スポーツサイクルを安全に楽しむためのレベル別のスクールやワークショップ、子ども向け自転車教室を開催。自転車で立川市内を散歩したり、校庭でレースを楽しむイベントの企画・運営も行っている。

 

一階の休憩スペースやギャラリーはサイクリストの立ち寄り場所になっており、ロードレースチームの東京ヴェントスが運営するスポーツサイクルショップ&コミュニティスペースの「Cycle GATE Tamagawa」も入居している。他にも、専用の自転車でサッカーをする「たちかわサイクルサッカークラブ」が、たちかわ創造舎を拠点に活動している。

 

「じてんしゃの学校」の様子

「じてんしゃの学校」の様子.

 

「たちかわ自転車キッズデイ」の様子

「たちかわ自転車キッズデイ」の様子

 

たちかわ創造舎の活動が、舎内だけでなく街に広がりつつあるため、今年度から新しく「コミュニティ・デザイン事業」が正式な事業として加わった。芸術文化やサイクルスポーツで街を活性化する事業を企画・製作し、立川市はもちろん、多摩エリアにもネットワークを広げていく活動を展開している。

 

たとえば毎月、たちかわ創造舎で開催している「ほうかごシアター」は回を重ねるごとにリピーターが増え、元音楽室の会場は乳幼児からお年寄りまで幅広い層の来場者でいっぱいになるほどの人気企画だが、同様の企画が立川市内の他の公共施設のほか、国立市や武蔵野市でも行われるようになり、来年度はさらに増える予定だ。

 

ほうかごシアター「ブレーメン音楽隊」より

ほうかごシアターの模様

 

 また、昨年からスタートした「立川シアタープロジェクト」では、立川市、立川市地域文化振興財団と一緒に立川発のオリジナル演劇作品を創り、クリスマスにたましんRISURUホールで上演している。昨年は『音楽劇 アラビアンナイト』、今年は『西遊記~悟空のぼうけん~』を上演する。
今年の公演情報はこちら 

 

各種事業展開により、かつての学び舎は、地域との交流の場、多摩エリアに文化芸術を発信する拠点となっている。

 

 

「人と人とがつながる“場”つくりによる地域活性化を」

こうした幅広い事業を行う、たちかわ創造舎は個性的な面々によって運営されている。職員には振付家、ダンサー、映画監督、舞台俳優など自身もアーティストとしての顔を持つ者が多く、アルバイトも俳優、お笑い芸人、ミュージシャンなどが顔を揃える。そこにシェア・オフィス・メンバーや、撮影利用の団体が出入りする、まさに「カルチャー・ファクトリー」としての活気がここにはある。

 

さらに、たちかわ創造舎が独特なのは、演出家の倉迫康史さんにチーフ・ディレクターを委託していることだ。いわゆる芸術監督というポジションに近い。

 

倉迫さんは演劇で社会とつながってきた経験を活かし、たちかわ創造舎が「各事業を通じて地域活性化に貢献する施設」となるべく、様々な角度から企画を立案してきた。それを彼は「街を演出している」と言う。

 

「私の考える地域社会の活性化とは『活き活きとした人と人とのつながりが生まれること』に他なりません。それには『同じ場に立ち会い、同じ体験をして、感想を語り合うこと』が重要。「ほうかごシアター」や「じてんしゃの学校」などでは、来場者と俳優、参加者と講師が対話する場が自然と生まれている。普段の生活の中に、文化・芸術やスポーツに触れる“場”をつくることで、地域に良い変化を起こしたい。」と倉迫さんは語る。

 

 

たちかわ創造舎がある立川市、立川市を含む多摩エリアの両方を視野に入れながら、地域社会をどうディレクションしていくのか。


たちかわ創造舎の目指す、立川の未来に期待が集まっている。

 

立川シアタープロジェクト公演より

立川シアタープロジェクト公演より

 

◆たちかわ創造舎
〒190-0013
東京都立川市富士見町6-46-1
旧多摩川小学校

更新日 : 2017年 12月 15日(金)