財団法人立川市地域文化振興財団 インタビュー
特別企画 管楽器奏者たちの祭典 (2003年2月)
工藤 重典<フルート>
 日本が代表する国際的フルーティスト。第2回パリ国際フルートコンクールで優勝。フランス独奏家協議会賞受賞。続けて第1回ランパル国際フルートコンクールで優勝し、併せてフランス共和国大統領賞も受賞。一躍国際的注目を集めた。83年からランパル国際フルートコンクール審査員。87年よりサイトウ・キネン・オーケストラの首席奏者を務める。
 現在、パリ・エコール・ノルマル科教授。パリ在住。

高木 綾子<フルート>
 3歳よりピアノ、8歳よりフルートを始める。東京芸術大学大学院2年に在学中。
 第17回日本管打楽器コンクール、フルート部門第1位及び特別賞受賞。第70回日本音楽コンクール・フルート部門第1位。
 確かなテクニックと個性溢れる音色、そしてジャンルを超えた音楽性で今最も注目を集めるフルート奏者である。

有田 正広<フルート/指揮>
 72年桐朋学園大学首席卒業。同年、日本音楽コンクールで第1位獲得。75年ブルージュ国際音楽コンクールのフラウト・トラヴェルソ部門で第1位となる。85年「ドイツ・バロックのフルート音楽」でレコード・アカデミー賞2部門と文化庁芸術作品賞を受賞。89年東京バッハ・モーツァルト・オーケストラの指揮者としてその結成記念公演を行い絶賛された。最近では、作曲家それぞれの時代のフルート数本を吹き分ける無伴奏リサイタルなど、特筆すべき活動を数多く行なっている。昭和音楽大学教授、桐朋学園大学古楽器科講師。

古部 賢一 <オーボエ>
 東京芸術大学在学中、弱冠22歳で新日本フィルハーモニー交響楽団首席オーボエ奏者に就任、現在に至る。
 数多くのオーケストラのソリストとして協奏曲作品を演奏。同時に室内楽の分野でも幅広く活躍中。ソロ・リサイタルも多く行い、オーボエの新たな可能性に挑戦を続けている。
 柔らかく甘い音色と響き、バロックから現代音楽に至る幅広い様式に対応する柔軟性と優れた音楽性は高い評価を受けており、現在最も注目されている若手オーボエ奏者。第10回出光音楽賞受賞。

赤坂 達三<クラリネット>
 日本で数少ないソロ・クラリネット奏者として主要オーケストラ、カルテットとの共演及びリサイタルで活躍。国立音楽大学で学んだ後、渡仏。パリ・コンセルヴァトワール、ベルサイユ国立音楽院等を首席で卒業。87年パリ国際音楽コンクール第1位、91年トゥーロン国際音楽コンクール第3位、日本木管コンクール第1位、日本クラリネットコンクール1位なしの第2位。そして朝日新聞社賞、楽友協会音楽賞受賞など輝かしい受賞歴を持つ。

須川 展也 <サクソフォン>
 東京芸術大学卒業。サクソフォンを大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門1位なしの2位、第1回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門において第1位を得てデビュー。比較的認知度の浅いクラシック・サクソフォンの分野に脚光を浴びさせ、若者たちの目標的存在となっている。94年村松賞、出光音楽賞受賞。98年JT音楽家シリーズのテレビCMに出演し、圧倒的な人気を得た。現在、東京芸術大学講師。

2月2日(日)大ホールで開催される「管楽器奏者たちの祭典」の出演者6名にお話を伺いました。楽器の特徴・公演の聴きどころ、また公演によせる想いなど出演者の方々の素顔が垣間見られます。このインタビューもご覧いただければ、当日の公演をよりお楽しみいただけるのでは!

♪楽器を始めたきっかけ(または、楽器との出会い)
工藤:学校のリコーダー授業の後、ジュニアオーケストラオーディションでリコーダーを持って受けに行き、フルートの音に魅せられました。
高木:幼い頃、両親が「手に職を」とピアノを習っていたが、才能がなかったのと手が小さかったので「他の楽器に変えよう」ということになり、母が父にプ レゼントしたとされるフルートが、まだ家にあったのを出して吹き始めたのが最初。
有田:小学校の校庭に流れた下校の音楽、それは美しいフルートのメロディー(アルルの女メヌエット)でした。それ以来、僕はフルートと共に生きています。
古部:中学校で吹奏楽部に入った時、顧問の先生にたまたまオーボエをあてがわれて。本当はトロンボーンかパーカッションをやりたかったです。
赤坂:奥深い音色に引かれて思わず楽器を買ってしまった。
須川:中学生の時、吹奏楽部に入ってフルートを吹いていたのですが、サックスのかっこよさに憧れて、楽器の転向をしました。

♪楽器の魅力を伝えるとしたら
工藤:音色の良さ。
高木:あまり悪いイメージがなく、優雅、きれいと言われることが多い。
有田:息を使うという人の声に近い、管楽器の中でもフルートは声楽でいうソプラノと同じ。透明な音色で、様々なニュアンスと美しい歌を奏でることがで きる楽器です。
古部:奏者によって全く違った音色が出る楽器なので、奏者個々の個性がはっきりわかる楽器です。オーボエ独特の美しい音色と歌心でしょうか。
赤坂:クラリネットは、管楽器の中では最も音域が広く、低音から高音域までの豊かな表現を楽しむことができる。
須川:サクソフォンは、音色の変化をつけることができ、とても美しい澄んだ音から、濁った音まで様々な音を出すことができること。

♪気分転換は何をされていますか?(趣味など)
工藤:料理、サウナ、スキー、ワイン、映画、読書、ドライブ。
高木:風呂、ひたすら寝る、買い物、水泳、漫画を買って一気に読みつくすこと。
有田:冷蔵庫と相談しての料理、読書、テレビなど。とにかく音楽とは全く違うこと。
古部:読書、ドライブ、おいしいものを食べる、飲むこと。
赤坂:スキューバダイビング。  
須川:ドライブ。

♪演奏家を志している方へ、一言アドバイスをお願いします。
工藤:いい音、いい音楽、いい環境、いい先生、いい友人。そして強い意志が必要。
高木:音楽に対してはもちろんの事だけど、他の色々な事にも興味を持って挑戦したり、たくさんの事を経験する事が、後に演奏る時に役に立ったりす るので、何にでも興味を持って挑戦する心を忘れないで下さい。
有田:基本練習は常に行う。また有名な演奏家など人のマネは絶対にせず、楽譜と自分が真っ直ぐに向き合い、譜面から自分でひとつで も発見できるよう に。
古部:音楽家に必要な才能とは、“努力を続けられる才能”です。そして“好きこそ物の上手なれ”です。
赤坂:歌の気持ちを忘れずに
須川:まず音楽を、そして楽器を大好きになること。また、まわりからどう自分が見られているか、というような自分を客観的に見ることを忘れないで下さ い。

♪選曲の理由
工藤:
当初、フルートのために書かれた作品だったが、オリジナル性が明確ではないため、不当に扱われた時代もあった。しかし、フルートで吹くと一番 美しいのでは。
高木:一番お互いの楽器の性格が上手く書かれていて、しかも演奏上でのかけ引きみたいのがあって楽しいから。
有田:バロック音楽を古楽器で演奏する時、ホールの大きさは常に問題です。大ホールではなかなか聴こえにくいので、よく鳴る調(ニ長調)のクライン クネヒトを選びました。ドンジョンはフルートのエチュードで、僕は中学2年生の時にレッスンでみてもらった曲ですが、とても立派なソロ作品。ロマ ンティックな表現がまるで詩のように美し く、とても気に入ってます。
古部:他の楽器の方々とはキャラクターが重ならない曲、そしてオーボエの歌心を伝えられる曲と考えるとこの曲になりました。
赤坂:ガラ・コンサートなので、楽しい曲にしようと思います。
須川:ラプソディ・イン・ブルーは、名曲中の名曲です。オーケストラ版でもサックスは入っており、演奏する憧れが強かったので、アレンジしてもらいまし た。ガーシュインの魅力を伝えられたらと思います。

♪最後に、立川のお客様にメッセージをお願いします。
工藤:いつも暖かく迎えてくれる立川の聴衆の方たちに感謝します。
高木:これだけ沢山の木管のソロや組み合わせを一度に聴けるのは、なかなか少ないので、それぞれの音色の違いやアンサンブルのおもしろさを堪能して下さい。
有田:心に響く音楽はジャンルを越えています。どんな音楽でも自分が気に入ったものであればそれは宝物。そんな宝物をひとつでも多くしたいですね。
古部:僕自身もこの素晴らしい演奏会で、皆さんとの出会いを楽しみにしています。一緒に楽しんで下さいね!
赤坂:国立音大で学んだこともありますので、立川の辺りには、大変親しみを感じており、当日を楽しみに しております。
須川:いろいろな管楽器の演奏家が一堂に集い、素敵な音楽がたくさん聴くことができるコンサートだと思 います。時間を忘れて、リラックスをしに来て下さい。当日を楽しみにしております。