【11/23(金)開催!】 高木正勝特別インタビュー

 2018年11月23日(金・祝)、東京初演となる『高木正勝 ピアノソロ・コンサート Marginalia』をたましんRISURU ホール大ホールで開催いたします。1年半以上にわたって作り続けているシリーズを集めたこのコンサートは、ピアノソロといういたってシンプルな方法で、全身の感覚を研ぎ澄まして虫や鳥の声を聴き、互いに応え、風に寄り添い、時には雷の音もそのままに、限りなく自然に近づいて鍵盤を動かし表現する世界。このインタビューでは、立川に初めてお迎えする高木さんの音楽のルーツ、『Marginalia』とはどんな音楽なのかをご紹介いたします。

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高木 正勝
 Masakatsu Takagi

1979年、京都府亀岡市に生まれ育つ。2013年に兵庫県篠山市の山間に移住。長く親しんでいるピアノを用いた音楽、世界を旅しながら撮影し創った”動く絵画”と評される映像、両方を手掛ける作家。国内外でのCDやDVDリリース、美術館での展覧会や世界各地でのコンサート、映画・CMの音楽など、分野に限定されない多様な活動を展開している。2009年、Newsweek日本版で「世界が尊敬する日本人100人」の1人に選ばれた。映画では『おおかみこどもの雨と雪』(2012)、『バケモノの子』(2016)、スタジオジブリを描いたドキュメンタリー『夢と狂気の王国』(2013)などの音楽を手掛け、今年7月には『未来のミライ』が公開。2013年、アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)関連企画としてエチオピアを訪問・取材し、映像作品『うたがき』を発表した。最新アルバムは昨年3月に発表した『YMENE』。また11月21日(水)、日米よりアルバム『Marginalia』の発売が決定。これまでに配信された『Marginalia』全曲を、以下ウェブページにて聴くことができる。 
https://takagimasakatsu.bandcamp.com/ (外部リンク)

オフィシャルウェブサイト(外部リンク)

 

今回は初めての立川でのコンサートです。京都府亀岡市で生まれ育った高木さん、今回まで立川をご存知ではなかったとのこと。亀岡を東京で言えば「吉祥寺のちょっと先というイメージ」とおっしゃっていましたが、立川と似ているところがあるのかもしれません。

 東京へは仕事で出て来るのですが、映画のスタジオ(細田守監督の『スタジオ地図』)が荻窪にあるので制作中はよく行きますが、その先(西)へはなかなか…(笑)。
 立川は、僕が育った亀岡市に似ているのかなと勝手に想像しています。亀岡市は盆地で、京都市から山を一つ超えたところにあります。京都へ通う人が住むベッドタウン。田畑が広がる田舎のイメージが強い世代と、僕らみたいに子供のころに新しい住宅地が出来てそこに移り住んだ都会的なイメージを持っている世代とが共存しています。僕が育った新興住宅地は、古くから残るお祭りや神社、お寺もありませんでした。ひとつ坂を下がれば昔からの文化に触れられたのですが、子供だったので新興住宅地から出られずに固まっていましたね。そういったところで育ったので立川に伺うのは故郷に帰るような気分です。

 

その暮らしの中で、ピアノを始めたのはいつ頃、どのようなきっかけでしたか?

 小学生の頃には家のピアノで遊んでいました。当時流行っていた歌謡曲やゲームの曲をなんとなく弾いてみたら弾けたので、学校の発表会で、友達と、音楽室の楽器を使ってX JAPANの耳コピバンドをやったりもしました。でも誰も練習してこず5分間立ちっぱなし、僕だけが最後までピアノを弾くという発表になってしまいました (笑)。そんな様子を見ていた親に「弾きたいなら習ってみたら」と勧められ、中学生から先生について習い始めました。最初に行った教室は子どもがまず習うような教則本をやっていて、正直おもしろくなかったんです。そこで近所のもう一つ別の教室に行ってみたら、練習のしかたが全く違いました。指の筋トレみたいなものを1時間くらい。次に「好きな曲を弾いてみよう」と言われたかと思えば、通常の4分の1くらいの速さでしか弾かせてくれず「これは、きつい・・・」と(笑)。残り10分くらいになってやっと通常のテンポで弾かせてくれるのですが、そうしたら、スラスラーと弾けるんですよ。楽しい!と思えました。部活でサッカーをやっていたので、ひたすら基礎練習をして本番、という流れは結びつけやすくもありました。ピアノも、本番の曲は練習してもしなくてもいいくらいな、それで弾けるようになるんだと思いました。その先生は骨や神経の仕組みなども教えてくれて、身体の使い方が自然と身につきました。そのころのトレーニングは今もずっと続けています。表現の面でも「バッハの時代は音が響きにくかったピアノで作曲されたメロディだから、それを意識して弾くと、当時の感じが表現できるよ」など、音符には書かれていない教え方が上手な方でした。

 

高木さんとX JAPAN、思いもよらぬエピソードでした(笑)。高木さんの弾き方、タッチの力強さや繊細さの技術は、そこにルーツがあるんですね。音楽や作品では、影響を受けたものはありますか?

中学生の時に見た『ピアノ・レッスン』(ジェーン・カンピオン監督、マイケル・ナイマンの音楽が注目を集めた)という映画です。未開の地だったニュージーランドが舞台で、主人公の女性はスコットランドからやってくるのですが、その故郷の民族音楽をピアノで表現していました。僕にはそれがとても衝撃的でした。日本にも古くからのお祭りの音や民謡が多くありますが、ピアノでやろうという発想なんて全くなかったんです。でも映画の中でピアノという西洋の楽器を使って西洋生まれではない自分たちの音楽を表現して、激しくピアノを弾いているのを見たとき、「これなら自分もやりたい」と思いました。以来ずっと同じようなことをやっている感じです。

 

高木さんの過去の作品にも民族音楽が取り入れられたものがあり、アフリカなど世界各地で撮影した映像とともに作曲されたりもしています。前作の『山(やま)咲(え)み』は、現在お住まいの日本の里山がモチーフでしたね。

 『山咲み』では、昔から残っている日本の民謡をピアノで弾いてみたらどうなるんだろうと、山に住んでいるおじいさんやおばあさんが歌っているような感覚で弾けないか、時には(自分の演奏を)21世紀のこの現代に何をやっているんだ!と思いながら(笑)、どうにか落とし込めないかと思っていろいろ試して楽しんでいます。

 

山咲み -2015年のコンサート映像

 綺麗に弾いているだけではどうしてもふわっと安全な感じになってしまって上手くいかなくて、荒々しいまま、自然をそのままで音にしようとすると、たまたま、くっと体を引いてみたときにその強さが出たりするんです。たとえばでんでん太鼓みたいに体をひねりながらぶらぶら回している腕がたまたま当たると、力が入っていなくてもめちゃくちゃ痛い、ということがあるじゃないですか。そういうことを鍵盤にも応用できるんじゃないかなと思ったり。力が入っていなくても強いタッチで弾ける、とか、逆にすごく弱いタッチでも指先だけではダメで、お腹に力を入れてみたらできる、とか。家でも、雑巾がけや畑仕事をしていると、ピアノを1時間練習するよりも良いなと思うことがよくあります。最初はめんどくさいですけど(笑)、やってみるとこれはトレーニングだ!と思う。この前太極拳に挑戦したときにも、これはピアノを弾く時に活きるな、と気づいたことがありました。

 

今回演奏する『Marginalia』も、現在住む山や、旅をしたソロモン諸島の自然がきっかけで作り始めた作品だそうですね。民族の音楽と同じように、自然の音もその土地土地で全く違うものだと思います。


Marginalia #1

 ソロモン諸島へは当初、映画『未来のミライ』の音楽のために行きました。細田守監督と「賛美歌とかが合うんじゃないか」と話していたら、ある映画でソロモン諸島やパプアニューギニアの教会で現地の人たちが賛美歌を歌うシーンを見て。賛美歌という、もとは西洋の音楽が現地の音楽に溶け込んで歌われているのがすごく良かったので、聴きに行きたいと思って行きました。教会の音楽はもちろん、鳥、風、波など、自然の音もたくさん聴きました。1周しても歩いて5分くらいの小さな島で、これほどまでに誰にも会わず、何もすることのない時間を味わった一週間は初めてでしたね。
 今住んでいる山でも、窓の外の虫や鳥の音を聞いていると、ふとした時に風がワーっと吹いてワサワサと木の葉が揺れる、という瞬間があって、その音を聞くたびにすごいなと思う。いくら作曲して良い曲ができたと思っても、そういうものを聞いてしまうと、それらには悪いところがひとつもなくて、圧倒されるんです。ずっと、そっちがいいなと、近づきたいと思って、自然の音に答えがあると思って聴き、弾き続けています。以前は自然の音を録音して後からピアノと混ぜたりもしていたけれど、今は、ただ窓を開けて、外の声を聴きながら応えるようにピアノを弾いてみます。そうしたら向こう(外の生き物など)も聴いてくれるので、その音をそのまま録音してみる。1年半くらい前から、今も継続してMarginaliaを作り続けています。

 

そういった音楽をコンサートで表現すること、聴く側としても、ホールにどのような世界が広がるのかとても楽しみです。本番へ向けてメッセージをお願いします。

 これまでコンサートでは映像を使用することが多かったのですが、今回は自然の中でピアノを弾いた時に感じた色を照明で表現したり、今回だけのための美術や構成をよく考えたいと思っています。初めての会場なのでピアノやホールにどう溶け込めるかという緊張もありますし、どういうステージにするかいつもいろいろ迷うんです(笑)。お客さんが持ってくる気みたいなものもあるし…そういったものともコミュニケーションを取りながら、楽しみます。コンサートホールは外の音が聞こえないですが、ピアノの音を聴きながら、それぞれの景色を思い浮かべていただけるといいなと思っています。
 山に住んでから、毎日会っていた方が少しずつ弱っていって亡くなるのを間近に見ていくようになって、作った曲が作品になったとしても、50年、100年ずっと残り続けるものじゃないんだということをちゃんと理解するようになりました。それなら、今日会ったその人と、演奏を介して味わった時間の中でいいことが起こったほうがいいなと思っています。その1日で持って帰るものがあるように、その人の心に残るものになってくれるように、演奏したいなと思っています。

 

高木さん、ありがとうございました!
コンサートに先立って、11/21(水)にはアルバム『Marignalia』、11/23(金)当日には高木さん初の書籍『こといづ』が発売されます!詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
高木正勝オフィシャルサイト「おしらせ」
(外部リンク)

 

高木正勝 ピアノソロ・コンサート「Marginalia」

2018年11月23日(金・祝) 16:00開演
全席指定5,400円(ムーサ友の会会員5,000円)

チケットのお求めは
たましんRISURUホール窓口(TEL.042-526-1311)
財団オンラインチケットイープラスでも発売中!

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